私は一度もこうして殺された事がないから、歌がどれくらいの長さなのかも分からない。
必死に立ち上がろうとするけれど、倒れている私の上に、「赤い人」が乗っているから思うように動けなかった。
立ち上がる事ができたところで、振り返る事ができないなら……。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」
留美子は無事に逃げてくれたから、後の事は任せようと思った。
私は運が悪いから、「赤い人」に遭遇するなら、きっと私の方だ。
そう思って留美子と分かれたんだから。
「まっかにまっかにそめあげて~」
そこまで唄われた時、私はゆっくりと振り返り、翔太に手を伸ばした。
「翔太……助けて……」
死ぬ覚悟はしていたのに、口から出る言葉は助けを求めている。
これじゃあ、二見の事をとやかく言えないかな。
そんな訴えさえも……私と翔太の間に割り込んで邪魔をする「赤い人」。
腹部を圧迫していた感覚が消えたと思ったら、私に向かって手を伸ばして一言。