そんなの、私にも分かるはずがない。
携帯電話の明かりで照らし出されたのは、袴田でも伊勢でもなかった。
うつろな目で、焦点が定まっていない翔太が、そこに立っていたのだ。
そんなはずがない……だって、翔太は死んでいたはずなのに。
脈もなかったし、身体も冷たかった。
それなのに、どうして私達の目の前に立っているの?
「翔……太?」
もしかして、死んでいなかった……なんて、都合の良い事を考えていたわけじゃない。
この狭い空間で入り口をふさがれていたら、私達は逃げる事ができないから。
しかし、私が呼びかけのせいか、どこを見ていたか分からなかったその視線が、私に向けられたのだ。
そして次の瞬間……。
『「赤い人」が、二見結子さんと相島美雪さんの背後に現れました。振り返って確認してください』
その校内放送が流れて、私の制服をつかんでいた二見の手の震えが、さらに大きくなり……。
「いやああああっ!!」
そう耳元で叫び、私の制服を後ろに引っ張った二見。