伊勢もそうだったけど、話してみないとその人が、どんな性格かは分からない。


まあ、他人任せという事を除けば、別に悪い人間ではないと思える。


「カラダ探し」をさせられていなければ……の話だけれど。


「この後はどこに行くのぉ?あんまり暗い所は嫌なんだけどぉ」


前言撤回……留美子が嫌う理由を再認識した。
私までその言葉にイライラしてしまう。


「夜の学校なんだから、どこに行っても暗いに決まってるでしょ。明るい所なんて、どこにもないよ」


「でもぉ、ここの廊下は少し明るいよねぇ?明かりが点いてるよぉ」


「誘導灯の光だよ、非常口に案内する……」


と、そこまで言って、私は言葉が出なくなった。


トイレの前……避難口誘導灯の明かりに照らされている廊下に、東側から伸びる影が、床にあったから。


この影は……いったい誰の影?


「赤い人」は歌が聞こえないくらい遠くに行ったはずだし、まさか一周して戻って来たの?


それにしては歌も唄っていないし、それほど時間もかかっていないはず。


だとすれば、考えられる可能性は……袴田か、伊勢のどちらか。


留美子がわざわざ危険を承知でこっちに来るはずがない。