「キャハハハハハハッ!」
そんな事を考えている間にも、笑い声は近付いている。
やっぱり、私が選んだ方に「赤い人」は来ているんだ。
「ふ、二見さん静かに。ここに入るよ」
二見が来るのを待ち、左手で口を押さえ、右手を肩に回して入った場所は男子トイレ。
一番手前の掃除用具入れ。
「赤い人」の笑い声を聞きながら、そこに入って私は息を潜めた。
二見の口を押さえたまま、私は廊下の音に耳を澄ましていると……。
ペタペタペタと、足音が近付いて来るのが分かるくらい「赤い人」が近くにいる。
昨夜、私のスニーカーが床でこすれる音で気付かれたくらいだから、さっきの話し声も聞き取られていたと考えた方が良い。
小さな掃除用具入れ、その中で抱き合うように二見と入っている……。
どうしてこんな事になったのだろう。
留美子が怒っていたから?
だから何も言わない私に付いて来たの?
私は死を覚悟して、留美子から「赤い人」を引き離すつもりでこっちに来たのに。
好きじゃないとはいえ、二見まで道連れにする事はできない。