廊下を南に逃げるか、それとも西か……目の前にある階段を下りるという選択肢もあるけれど、どこに逃げても「赤い人」に遭遇してしまいそうで……。


すぐには決められなかった。


ただでさえ音が反響しやすい静かな廊下なのに、「赤い人」の声がどこから聞こえているかの特定なんてできない。


「留美子、分かれよう。どっちが見つかっても、もう片方は生き残れるから」


「わ、分かった。じゃあ、私はこっちに行く!」


そう言い、指差したのは南側の廊下。


それなら私は西側。


「声が近いと思ったら、すぐにどこかに隠れてね!」


私の言葉を合図に、二手に分かれて走り出した。


きっと留美子は助かると思う。


私は運が悪いから、見つかるとすれば私の方に違いない。


そして「赤い人」に殺されて、私の今日は終わる。


留美子か伊勢が、カラダを見つけてくれれば、私の死も報われるから。










「相島さぁん、待ってぇ」



「えっ!?」










背後から聞こえた声に、私は思わず振り返った。


そこには、大きな胸を揺らしながら私の後を追いかけて来る、二見の姿があったのだ。


なんで私の方に!?


話もした事ないし、付いて来られても困るのに!