「相島、留美子を頼むわ。俺は武司の野郎を見張ってるからよ。お前らには、手を出させねぇ」


「え……あ、うん。分かった」


頼まれる程、私も大丈夫とは言えないんだけどな。


そう思いながらも、留美子の背中に手を回したまま、私達は玄関前ホールを後にした。


袴田はともかくとして、二見はどう思っているのだろう?


さっきの態度を見る限りでは、とまどっているようだったけれど。


留美子と共に東棟に入り、階段を上って生産棟に入る。


二階は全部調べたと言っていたから、三階を調べよう。


私がすでに2部屋を調べたから、まだまだ部屋数は多いけど、一階を調べるよりは早く済みそうだから。


「ぐすっ……武司の奴、絶対に許せない……クラスメイトを殺すなんて」


少し落ち着きを取り戻した留美子が、涙を拭いながら呟いた。


許せないのは私だって同じだ。


でも、相手が袴田なら、私ではどうする事もできない。


事務室の前で、死ぬまで殴られた事がトラウマになって、顔を見るだけで、怒りと恐怖が入り交じった感情が湧いてくる。