「伊勢君……翔太を運んであげないと。留美子もほら……翔太の分まで、私達が頑張らないと」


気付けば私も涙を流していた。


八代先生が言った通りに、まさか日中に殺されてしまうなんて。


唯一の救いは、「昨日」に戻れば翔太は生き返るという事だった。


袴田と殴り合っていた伊勢が、翔太の亡骸を背負い、私は泣きじゃくる留美子の肩を抱いて校舎の中に入った。


連れて歩くわけにもいかず、玄関前ホールの長椅子に横にして。


「赤い人」に殺されたわけじゃないから、きれいな亡骸。


それでも、携帯電話の明かりで照らすと、顔に殴られたような痕もあり、散々いたぶられた末に殺されたのだという事が分かる。


「翔太、すまねぇな。俺達が死ぬまで、ここで待っててくれ。武司は俺がぶっ殺してやるからよ」


長椅子から、ダラリと垂れた翔太の右手を握り締め、それを胸の上に乗せる。


「ひぐっ……しょ、翔太ぁぁ……なんで……あんたが殺されなきゃならないの……」


まだ泣きやまない留美子の背中をこすりながら、私も流れる涙を拭った。