「美雪!美雪!!目を覚まして!」
冷えた頬に、ペチペチという音と共に痛みを感じる。
ゆっくり目を開けると、私を抱えて心配そうに見つめる留美子の姿。
「あれ?どうして泣いてるの?留美子」
目をこすり、ゆっくりと体を起こして見回した私の目には、まだ横になっている翔太と、早くも殴り合っている伊勢と袴田の姿が映った。
不安そうにふたりを見る二見と、涙を流す留美子。
今までにない光景に、すごく違和感を覚える。
「いつもなら起きてるのに、翔太が寝てるなんて珍しいよね。私、起こしてくる」
泣きじゃくる留美子をそのままに、立ち上がって翔太に歩み寄る。
あんな所で寝てたから体が冷えちゃったかな。
ブルッと身震いをして、翔太の肩に手を置いた。
「翔太、起きて。もう始まるよ」
身体を揺すって起こそうとするけど、首がグラグラと揺れて、起きる気配がない。
なにかが……おかしい。
顔色が悪いように思えるし、何より呼吸をしていないようで、胸が上下していない。
まさかと思いながら、脈を取ろうと首に指を当てた私は……翔太がなぜ眠っているかを理解した。