「い、伊勢君だけじゃないけどね。明日香だって友達だもん。幼稚園の時からずっとね。でも、昨日探してたのって明日香だよね? 見つかったの?」


そう答えて、ぎこちない笑顔を、伊勢に向けてみたけど……。


当の伊勢は、その言葉に驚いている様子で、目を見開いたまま私を見つめていた。


この時の伊勢の表情の意味を、私はすぐに理解する事になる。


私の言葉で様子がおかしくなった伊勢と一緒に、いつもと変わらず、つまらない教室に入る。


私が入っても誰も気にする様子もなく、雑談を続けるクラスメイト達。


一応、室内を見渡すと……。


窓際の一番後ろの席。


そこに、いつもと同じように座っている明日香の姿がある。


「ほら、伊勢君。自分の席に明日香がいるじゃない」


明日香を指差して、背後にいる伊勢を見た私は、その表情に……胸が苦しくなった。






憂いを帯びた瞳で、涙が溢れるのを我慢しているような悲しそうな顔。





もしかして、伊勢は明日香が好きなのかな。


だから昨日、私を校門の外まで送ってくれた後に、明日香を探しに学校に戻ったんだ。


「相島……お前、明日香とは幼稚園からの友達だって言ったよな?」


「え? う、うん……」


伊勢らしくもない。


私にそう尋ねた声が、今にも泣き出しそうな程に震えている。