「俺は何となく分かるんだけどよ、こいつらが分からねぇから教えてやってほしいんだよ。俺じゃあ、細かい所まで説明できねぇんだ」


先生に対しても、敬語を使わない伊勢に、ハラハラしながら、そのやり取りを聞く。


「そうだな……短時間では説明なんてできないから、また5限目になったら来なさい。その時間なら職員室に僕ひとりしかいないからね」


思った以上に、私達に理解を示してくれる先生で良かった。


それを伝えて、階段を下りる八代先生の背中を見ながらそんな事を考えていた時。


踊り場で足を止めた先生が、ズボンのポケットからメモ帳を取り出し、私達を見上げた。


「もしかして……キミ達に『カラダ探し』を頼んでいるの人は、モリサキアスカという名前の女の子かい?」


その言葉に、私達は一様に驚きの表情を見せる。


私達が明日香に頼まれて「カラダ探し」をしているなんて、誰も知らないはずなのに、どうしてこの先生は知っているのだろう?


「やっぱりそのようだね。詳しくは後で話すよ。じゃあ、待っているからね」


メモ帳を閉じ、ポケットに戻した先生は、そのまま階段を下りて行った。