本当は留美子の言う通りかもしれないけど、あんな光景を見てしまっては、私が抑えるしかない。


異性を好きになった事がない私にとって、この胸の痛みが何なのか。


もしかして、伊勢の事が好きだったのかな。


それすら分からない。


屋上の入り口の段差に腰を下ろして、ため息を吐いていた私の目の前に翔太が歩み寄り、手を差し出した。


「美雪、ほら、今日も番号を入れるから、携帯を貸してくれ」


照れたように頭をかき、私から視線をそらす翔太。


「うーん、どうせ『カラダ探し』が終わるまで消え続けるから……いいよ。終わったら教えて」


「あらら、翔太もフラれてんの」


留美子は何を言ってるのだろう?


今の言葉で、私が翔太をフッた事になるの?


やっぱり友達って難しい。


手を差し出したままの翔太を見ながら、私が首を傾げていた時だった。


「うわっ! お、お前ら、こんな所で何してんだよ」


屋上の南側から戻って来た伊勢が、驚いた様子でこちらを見ていた。