もしも、昨夜みたいに袴田が生きていて、邪魔をされたら……。


この右胸もまた、行方が分からなくなるのだ。


いや、今度こそ処分されてしまうかもしれない。


そうなったら……明日香のカラダを集められなかったら、どんなに伊勢が悲しむか。


その顔を想像しただけで、胸が痛くなる。


「皆のために……頑張らないと」


もう、誰の亡骸を見ても腰を抜かしてなんていられない。


そうならないように、気をしっかり持たなければ。


心を落ち着ける為に何度も深呼吸をして、私は生徒会室を出た。


もう、引き返せない。


ここで私が殺されれば、今夜やった事まで無駄になってしまうから。


西側の階段か……東側の階段か。


昨夜は西側に「赤い人」がいると思って、東側から玄関前ホールに向かった。


そして、事務室の前で袴田に……。


ならば、今回は西側から行こう。


私の行動は、どうも裏目に出ているような気がするけど、今の状況では、どのルートを通っても大差がないように思えるから。


西側の階段を下りて、二階に着いた私は廊下の音を確認して、西棟へとつながる渡り廊下を走った。