「あ~かい ふ~くをくださいな~」











再び唄を歌い始めて、ここから遠ざかって行く声。


でも、まだ動く事はできない。


完全に「赤い人」の歌が聞こえなくなるまで、気を抜いてはいけない。


しばらくして……声が聞こえなくなって、私は深いため息を吐き安堵した。


「あ、危なかった……でも、どうしよう。誰かに知らせたいのに、『赤い人』が二階にいるんじゃ、皆を探せないよ……」


その場に座り込み、辺りを見回してみると……破壊されたマネキンの残骸が散らばっている。


明日は我が身と言うか、一寸先は闇と言うか、もしかすると私もこうなっていたかと思うと、全身に鳥肌が立つ。


「やっぱり……ひとりでやるしかないのかな」


皆、別の部屋を調べているし、カラダを運ぶ為に誰かを探すなんて、考えてみれば無駄な事だ。


こうしている間にも、伊勢なんかがカラダを見つけているかもしれない。


私はゆっくりと立ち上がって、もう一度生徒会室に向かう為に部屋を出た。


廊下の音、特に「赤い人」の歌声に注意を払いながら、私は再び生徒会室に来ていた。


引き出しの中からカラダを取り出し、それをギュッと腕に抱いて。