心臓の鼓動が早くなり、額にフツフツと汗が噴き出しているのが分かる。


間違いない……これは明日香の右胸。


でも、これを持ち出して、また昨夜みたいに殺されたら……せっかく見つけたこの右胸まで、どこにあるかが分からなくなってしまう。


まさか、カラダがあるとは思っていなかったから、どうするべきか、私は悩んだ。


少し考えて出した答えは、カラダがここにある事が分かったのだから、とりあえず持ち出さずに二階に戻る事。


留美子でも、伊勢でも良いから、とにかく誰かに伝えないと。


私ひとりでは、カラダを持ってこの場を抜け出す事さえ難しいと思うから。


カラダの入った引き出しを元の状態に戻した私は、ドアの前で廊下の音を確認していた。


視聴覚室から聞こえる、低くうなるような歌声に、時折混じる、ドンッ、ドンッという音。


壁を叩いているのだろうか、それとも、机でも叩いているのだろうか?


「赤い人」の姿を見てしまえば振り返る事ができなくなるから、その音の確認はできないけど、部屋の奥の方から聞こえているような気がする。


生徒会室の入り口は、部屋の西側と東側にひとつずつ。