「お顔もお手てもまっかっか~」
部屋の前の廊下に足を踏み入れたのだろう。
ドアを閉めたのに、はっきりとその歌声が聞こえたのだ。
ゆっくりと、でも、確実にこちらに向かって来る「赤い人」。
部屋の中に歩を進め、私は生徒会長の机の陰に身を潜めた。
「髪の毛も足もまっかっか~」
その歌声が、生徒会室のドアの前を通り過ぎた。
きっと、このまま視聴覚室に向かうのだろう。
胸が苦しくて、呼吸も自然と荒くなる。
この呼吸音でさえも「赤い人」に聞こえてしまうんじゃないかと不安になり、さらに胸が苦しくなるという悪循環。
「どうしてどうしてあかくする~」
そして、恐らく視聴覚室のドアの前で止まったであろうその声に、私は安堵した。
不安が治まったわけじゃないけど、私が殺される確率はガクンと下がったわけだから。
出るなら、今しかないかな……視聴覚室に私がいないと分かれば、「赤い人」は私を探すかもしれない。
あの、赤い服を着た少女が何者なのかは分からないけど、私が少女を見た直後、「赤い人」は生産棟の三階に、まるで呼び寄せられるように現れて、視聴覚室に一直線に向かって行った。