「し~ろい ふ~くもあかくする~」
そんな事を考えている間にも、歌声はどんどんこっちに近付いてくる。
もう、方法はひとつしかない。
この視聴覚室の目の前の部屋……生徒会室に逃げ込もう。
少なくとも、ここよりは安全だと思うから。
もしかすると、廊下に出た瞬間「赤い人」に見つかるかもしれない。
でも、確実に歌声が近付いているこの状況では、早く行動に移らないと私は殺される。
身体の震えに加えて、お腹まで痛くなってきた。
見つかってしまうのか、それとも見つからないで生徒会室内に駆け込む事ができるのか。
全身の皮膚が、背後の方に引っ張られているかのような、重く冷たい空気の中、私は廊下に飛び出した。
ひどい悪寒を感じながら、わずか数メートルの距離を、足音を立てないように急ぐ。
廊下を挟んで隣の部屋なのに、やけに遠く感じる。
「まっかにまっかにそめあげて~」
この歌も、原因のひとつかもしれない。
廊下に出て分かる……東側から歌声が聞こえるのが。
生徒会室のドアに手をかけ、それを開けて室内に身を滑らせ、ドアを閉めたその時だった。