「ここに……ないの?」


もしかすると、もとの場所に……なんて思っていたから、その光景は私を落胆させるには十分なものだった。


じゃあ……カラダはいったいどこに行ってしまったのだろう。


伊勢が聞いた話によれば、袴田はカラダを処分する前に「赤い人」に殺された。


それなら考えられるのは、もう一度どこかに隠されたという事。


一応室内も調べてみるけど、やはり機材が置かれているだけで、他には何もない。


「また……一から調べ直しなのかな……」


あまり口に出して言いたくはない言葉。


今までの努力が、全部無駄になったような気がして……。


「カラダ探し」を初めて三日目なのに、まだひとつもカラダを棺桶に納める事ができていない。


こんなペースで、本当にカラダを全部集める事ができるのかな。


もしもカラダを見つけたとしても、袴田に邪魔されたら、また一から調べ直しになる。


それだけは避けたい。


同じ所を何度も……というのは、精神的にきついから。


その部屋を出て、視聴覚室の中を再度調べる為に、私は室内に携帯電話の照明を向けた。


昨夜も同じ事をしたから、この部屋を調べ終わるのに時間はかからなかった。