私は棚から降りると、ほこりまみれの制服を手で払い、家政学室の入り口で廊下の音に耳を澄ました。


笑い声も、歌も、翔太の声も聞こえない。


まだ脚が震えているけれど、今なら廊下に出ても大丈夫だと思う。


作戦通り、保健室に行ったのかな?


家政学室の開いたドアから廊下に出た私は、近くにある階段へと向かった。


視聴覚室……そこに明日香のカラダが戻っているかもしれない。


そんな淡い期待を抱いて階段を上り、三階に到着。


昨夜通ったルートを通り、視聴覚室のドアの前で、私は足を止めた。


このドアの向こうに……また明日香の腰があれば、私は救われるような気がする。


もしもここになければ、どこにあるのだろう?


不安を感じながらも、ゆっくりとドアを開けた。


例の、妙な臭いが鼻を突く。


でも、調べる場所は機材が置かれている部屋。


そこにカラダがあれば、私の不安も少しは軽減される。


「どうか……ありますように……」


携帯電話をポケットから取り出して、ドアを開けた私の目に映った物は……。


カラダなど見当たらず、機材が置かれているだけの部屋だった。