「からだをちぎってあかくなる~」
すぐ近く……もう、見つかってしまうと感じるくらい近くから、その唄が聞こえる。
視聴覚室を調べる事もできずに、こんな所で見つかってしまう。
私が、諦めそうになった時だった。
「美雪!なんかすごい音が聞こえたけど……って、なんだこれ!うわっ、まずい!!」
隣の家政学室から、そんな声が業こえた。
と同時に棚が揺れて、ドンッという「赤い人」が床に着地した音がして……。
「キャハハハハハハッ!」
「赤い人」が準備室のドアを抜けて、その声の方へと走って行った。
再び静寂が訪れたのは、それからしばらく経ってからだった。
危なかった……今の声は翔太?
私を心配して、様子を見に来てくれたのかな。
でも、そのおかげで助かった。
翔太が来てくれなければ、私は確実に「赤い人」に見つかっていただろう。
「危なかった……翔太には悪いけど、助かったよ」
まだ胸のドキドキが治まらず、震えも止まらない。
棚の一番上でほこりにまみれながら、私は安堵の吐息を漏らした。
それから翔太と「赤い人」が、どこに行ったかは分からない。