『伊勢高広』
その文字に、私はうれしくなってベッドに横になり、脚をバタつかせた。
メールの内容は『大丈夫か?』という短いものだったけど、何よりも、家族以外の誰かからメールが来たという事がうれしかった。
「なんだか……友達みたいじゃない、これ」
友達……私にはそんな人はいないと思っていた。
作れないと思っていたのに、こうしてメールをくれる人がいる。
伊勢から来たメールに、どんな返信をしようかといろいろ考えているうちに、結局何も返信せずに眠ってしまった。
「赤い人」と「カラダ探し」。
私の携帯電話の電話帳に、家族以外の名前が登録された事がうれしくて、忘れていたけど……。
その本当の恐怖をこの時はまだ、私は知らなかった。