家政学室に置かれていたマネキンは5体。


それらを壊し終わるまでに、このスチール製の棚の上に上らないと、他に隠れる場所なんてこの部屋にはない。


なるべく音を立てないように……震える手で、棚の四隅に立てられた支柱をつかみ、一段、また一段と棚を上る。


そうして、一番上の天板に手をかけたその時、隣の部屋から聞こえていた音がやんだのだ。


まだ……上り切っていないのに。


動けば、音が聞こえるかもしれない。


でも……。












「あ~かい ふ~くをくださいな~」











再び唄が歌われ、それがこちらの方に向かって近付いてきていた。


わ、私はこの状態から、どうすればいいの!?


下りても隠れる所なんてないし、上がる時には音が出るかもしれない。


それでも、動かなければ見つかってしまう。


音を立てないように、慎重に……私は天板の上に体を乗せて、全身を隠すようにそこに伏せた。










「し~ろい ふ~くもあかくする~」











そう歌われながら、準備室のドアが開いたのは、その直後の事だった。