『「赤い人」が、生産棟二階に現れました。皆さん気を付けてください』










その言葉に、私はドアノブに触れた手を放した。


最初は三階だったのに、次は二階。


どこに「赤い人」がいるのか分からない。


そう考えて、一瞬動きを止めた私は、救われたかもしれない。









「キャハハハハハハッ!」












隣の部屋……家政学室から、「赤い人」の歌ではなく、笑い声が聞こえたから。


私はどうしてこんなに運が悪いのだろう……。


「赤い人」が、この部屋の隣にいる。


少しでも物音を立てると気付かれそうなのに、こんな部屋に入ってしまった。


いつ、校内放送が流れるか分からないとは言え、皆に反対されても視聴覚室に行けば良かった……。


「赤い人」が笑い声を上げてすぐに、ゴンッ! という、何かが床に落ちたような音が聞こえ、あの歌が唄われ始める。









「あ~かい ふ~く……」








しかし、その歌もそこで止まり、再びわずかな静寂が訪れた。


もしかして「赤い人」は、マネキンを人間と勘違いして襲ったの?