翔太が言うには、伊勢が事務室の中から袴田の様子をうかがっているらしく、校舎に入って保健室に直行しなければ、カラダを処分できなかったと判断するらしい。


避難口誘導灯の光を頼りに、家政学室に到着した私達。


そのドアを開けると、すでに中にいた留美子が携帯電話の明かりで私達を照らし、歩み寄って来た。


「翔太、あんた大丈夫?血が出たんでしょ?」


やはりあの態度は、作戦通り演技だったのだ。


「ああ、これくらいなら平気だ。留美子も迫真の演技だったぞ」


右手の親指を立て、ニヤリと笑みを浮かべる。


「あれくらいできなかったら、仮病も使えないっての。あんなの普通だって」


そう言えば、留美子は授業中にでも、何かしら理由をつけて保健室に行っていたような気がする。


授業はサボるけど、学校は休まない……そんな印象が強い。


「まあ何にせよ、高広が来るまでにこの部屋を調べておこうか」


携帯電話を取り出して、翔太がそう言いながら、部屋の中を歩き始めた。


留美子や翔太に続き、携帯電話を取り出した私は、その光で部屋の中を確認する。