「美雪、勉強はしているのか?」


「うん……」


「そうか、それなら良い」


お父さんはいつもそう言うだけ。


私は、家から近かったから、今の学校を選んだけど、真冬は進学校に通っている。


お父さんは、私の判断が気に入らなかったらしく、真冬にはそんな事を一切言わない。


お母さんと真冬は仲が良くて、私はその会話に入る事もできなかった。


「ご馳走さま」


自分の食器を洗うのは私だけ。


洗うのを忘れたら、翌日の夕食には汚れた食器で食事を出されるから。


こんな家庭で育ったから、人との付き合い方も分からないんだと思っていた。


洗い物を終えると、私はすぐにお風呂に入らなければならない。


そうじゃないと、誰も呼びに来てくれないから、湯船のお湯を流されてしまうのだ。


家にいたくないから、私はいつもひとりで学校に残っていた。


食事の時間までに帰れば、それでいいのだから。


お風呂から上がって部屋に戻った私は、携帯電話がピカピカと光っている事に気付いた。


今まで、一度も見た事がなかったその不思議な光に、私の胸は高鳴って、慌てて携帯電話に駆け寄り、それを開く。






メールが来てる……。






私のメールアドレスを知っているのは、家族の他には伊勢しかいない。


なんか……胸がドキドキする。


受信メールを開くだけなのに、どうして手が震えるのだろう。


携帯電話の画面、メールのアイコンを選択して、その中身を見ると……。