「え、でも……眼鏡も壊れたし、血も出てるよ?無駄な体力を使わせないように、伊勢君は袴田を殴らせないって作戦じゃなかったの!?」


階段を上りながら、小声で翔太にたずねる。


「ひじが当たったくらいで、つるが折れるはずがないだろ?『カラダ探し』が始まる前に切断して、接着剤でくっ付けておいたのさ」


眼鏡を取り出して、それを見せる翔太。


じゃあ、血を流す所まで、計算通りだったわけだ。


「まあ、出血するとは思わなかったけど……なかなか止まらないな」


あ、そこは予想外だったんだ……。


「でも、どうして伊勢君は袴田を? そんな作戦じゃなかったでしょ?」


「簡単な話さ。高広の体力を消耗してしまうけれど、袴田も相当疲れてるはずだ。それなら、仮に邪魔をされる事があっても、俺達でもどうにかなるかもしれないだろ?」


私の知らない所で、皆で連絡を取り合っていたのかな……私は寝ていたから、それを知らされなかったというわけだ。


当初の予定通り、西棟から生産棟に入り、最初の十字路を右に曲がるとその部屋はある。


家政学室……生徒達は家庭科室と呼んでいるけれど、中に入った事はない。