私は、出血している翔太に駆け寄り、地面に落ちた、壊れた眼鏡を拾い上げる。


出血しているとはいっても、針で刺した程度の小さな傷で、たいした事はなさそうで安心した。


「ああ、大丈夫だ……高広の奴、俺の眼鏡を壊しやがって……」


頭部に受けたダメージが脚にきたのだろうか。
フラフラと、よろめくように立ち上がる。


「ハッ!仲間割れかよ!仲良しごっこもここまでってか?笑わせるぜ!」


袴田は、私達が中に入るまで動かなかった。


翔太を支えて生徒玄関に入り、振り返って見るまで。


翔太に肩を貸して、とりあえず西棟の方に向かった。


私の意思ではなく、翔太に指示されるままに、階段を上がる。


踊り場に着いた時だった。


突然翔太が、私の肩から腕を離し、ふらついていた脚もしっかりと、その場に立ったのだ。


「さて……作戦通りだな」


私はその言葉に耳を疑った。


今の一連のやり取りが全部演技だったの!?


私までだまされた……。