伊勢が、ムスッとした様子で私と翔太に視線を向けていた。


伊勢だけじゃなく、留美子も、うんうんとうなずいてはいるけど、たぶん理解していない。


「つまりだな、俺達がカラダを探すのを諦めたと袴田に思わせるんだ。でも、カラダは探す。本当に処分したのなら、袴田は動かないだろう」


翔太の言葉に、首を傾げながらも、小さくうなずく伊勢。


「だけど、処分していなかったとしたら、俺達の邪魔をしてくる可能性があるだろ?」


「もしも、途中で『赤い人』に殺されていたら、その場所に行って、カラダがそこにあるか確認するかもしれないしね」


さらに、付け足すように言う私に、伊勢だけじゃなく、留美子まで首を傾げる。


「んー、ごめん、意味分かんない。邪魔するのを確かめるなら、別に諦めたように思わせなくてもいいんじゃないの?」


留美子の言うように、確認だけなら、諦めたと思わせる必要なんてない。


でも、これにはもうひとつ大きな意味がある。


「夜に、袴田を見るなり高広が喧嘩を始めたら、体力の無駄だろ? 諦めたと思わせる事が大切なんだ」