「伊勢君は……『赤い人』の事を知ってるの? 私を心配してくれたんだよね?」


「ん? ああ、相島も『カラダ探し』って知ってんだろ?あれ、俺はさせられた事があるからな」


思いもよらなかった伊勢の言葉に、私はどう答えて良いか分からなかった。


「カラダ探し」をさせられた事がある?


だから、「赤い人」を知っているって言いたいの?


そんなの、信じられるわけがないじゃない。


確かに私は「赤い人」を見てしまったけど、「カラダ探し」なんて、後から誰かが面白がって付けた噂じゃないの?


でも、片方を信じて、もう片方を信じないなんて都合が良すぎるし……。


「じゃあさ、『カラダ探し』の事を教えてよ。私は噂でしか知らないからさ」


伊勢は頭が悪いから、突然こんな質問をされて、嘘だったら話がブレるはず。


仮に、前もって考えていたとしても、深く突っ込んできけば必ずボロが出る。


そう思っていた。


「『カラダ探し』はな、小野山美子ってやつの呪いなんだよ。50年以上前に起こった、バラバラ殺人の被害者っつー話だぜ?」


「バラバラ……じゃ、じゃあさ、その犯人は?」


「山岡泰蔵って奴のせいになってるけどよ。本当はその弟の、雄蔵らしいぜ……って、これ以上長くなるなら電話しろ。携帯持ってんだろ? 番号言えよ、登録しとくから」


私は、伊勢の言う通りに携帯電話を開いて、番号を言った。


なんか、嘘にしても、作り話にしてもリアルで、私をだまそうとしているようには思えなかったから。


「んじゃあ、校門も出たし大丈夫だろ? 俺はもう少し、明日香を探してくるからよ」


そう言って、学校に戻る伊勢の背中を見つめて、私は携帯電話を握り締めた。


「赤い人」を見なければ良いけど……と、今度は私が伊勢を心配して。