普通なら、訳が分からないこんな状況は怖くて、叫び声のひとつでも上げるのだろうけれど……。


不思議と怖くなくて、私を抱き締めてくれている人が、明日香だという事を理解していた。


「明日香……ごめんね。明日香のカラダ……袴田に取られちゃったよ……」


涙を流してそう言った私の頭を、明日香はなでてくれて、その後に笑顔を私に向ける。







「大丈夫だよ……美雪。私のカラダを探して」








明日香もまた、涙を流してそう答えた。


明日香の温もりが、その言葉の後に、私の体からスウッと消えていった。


それと同時に、携帯電話にメールの着信音。


抱き締められたおかげで、少し落ち着く事ができた。


私は、枕元にある携帯電話を手に取り、受信メールを開いた。


『今、家なんだろ？　行くから待ってろよ』


その文章に、胸がドキドキする。


良い意味も、悪い意味も含めてだけど……。


やっぱり、伊勢は怒っているからここに来るのかな？


それとも、心配してくれているから来るのか。


どう考えても怒ってるんだよね……。