「赤い人」って、何者なのだろう?


噂では、放課後にひとりでいると現れるらしいけど……。


私が振り返った時には、伊勢が隣にいた。


なのに、「赤い人」が見えたという事は……校内で「赤い人」を見てしまった人にしか見えないという事か、見てしまった後は、誰かと一緒にいても同じという事になる。


「なあ、相島。お前、さっきから何をブツブツ言ってんだ?」


伊勢の言葉に、私はハッと我に返った。


こうやって、考えている事を口に出して言うから、皆気持ち悪がって無視するんだ……。


「ご、ごめん……気持ち悪いよね。独り言ばっかりでさ……」


また、私と話をしてくれた人に無視されるんだ。


でも、それももう慣れた。


「別にいいんじゃねぇの? 俺はバカだからよ。そうやって考えられる奴はうらやましいけどな」


……意外だった。


伊勢がそんな事を言うなんて。


何より、私のこの癖を気持ち悪いって言わなかった事が、少しうれしかった。