例年よりも早く始まった梅雨は、例年よりも早く終わった。

ニュース番組で馴染みの天気予報士さんが梅雨明けを告げる少し前からカラカラし始めた青い空は、今日も今日とてどこまでも爽やかに晴れ渡っている。

梅雨は明けてもじめっとした感じは変わらない。蒸し暑い。これから、本格的な夏がやってくる。


「千世、起きてるの?」


部屋のカーテンを開けていたところで、1階からお母さんの声がした。


「起きてるよ」


厳密に言えば今起きたところ。


「お布団干すから下降ろしてきて」

「ええ!? めんどくさいなあ……」

「持って来なきゃ千世のだけ干さないからね」


うっ、と声を詰まらせた。前回のお布団干し日和の日、お母さんのこの言葉を無視したせいで、わたしのだけ干してもらえなかったのだ。

起き抜けにこの労働はきついなあと、ため息をもらしながら敷き布団を運んだ。

暑い今の時期は掛け布団を使っていないのが救いだ。布団1枚とタオルケットだけ持って行けばいい。


ひいひい言いながら階段を下りて、リビングの向こうの掃き出し窓のところに布団を置いた。庭では、お母さんが自分のとお父さんの分の布団をもう干している。


「よいしょ! ああ疲れた」

「はいごくろうさま。朝ごはんそこにあるから食べなさい」

「フレンチトーストだ!」


朝ごはんの置かれたテーブル。わたしが腰かけた席の斜め前にはすでにお父さんが座っている。休日の今日はいつも以上に緩んだ顔をして、新聞を読みながら無精ひげが生えたあごをぼりぼりとだらしなく掻いていた。