ブルルッとスカートのポケットが震えた。取り出したケータイに、メールが1件届いている。
あ、もしかしてあいつかな、と思い浮かんだ相手の名前が、そのまま液晶に浮かんでいた。
『神崎 大和』
ピコピコとボタンを打って、届いたばかりのメールを開いた。
いつも通り件名はなし。本文は、少ないたった2行のお知らせ。
『今日はレギュラー発表の日。
結果はまた、報告する。』
絵文字なんてひとつもない白黒メールのそれに、わたしも似たように返事をする。
『了解。期待しないで待ってる。
部活頑張ってね。』
メールと言うより電報みたいだと考えながら、ぽち、と送信ボタンを押した。
電子の文字はあっという間に遠くのケータイへ届く。なんとも便利な世の中だなあと、ケータイをスカートへしまいながら思った。
期待しないで待ってる、なんて送ったけど、本当は期待どころか確信していた。
去年、1年生でナインの座を勝ち取ったのは大和だけだ。大和が、レギュラーに選ばれないわけがない。
『レギュラーに選ばれました』という去年とおんなじメールが、きっと、今日の夜にでも届くんだろう。
当然のことだと思ってるから、とくに楽しみでもなんでもない。
大和とは、生まれた頃から一緒にいた。
前に住んでいた町で、家が隣同士だったのだ。いわゆる幼なじみ。
誕生日も近くてほとんど一緒に育ったせいで、わたしにとっては家族にも近いような存在だった。