解決策は何ひとつ浮かんでいない。しかしひとつだけ思いついたことがあった。目には目を、歯には歯を、食べ物には調理部を。
ということでわたしは調理部の部活がない日を狙って、紗弥を例のお店へと連れ出した。
「てかさあ」
学校帰り、商店街を突き進みつつ説明をしていたわたしに、紗弥が間延びした声で言う。
「あたしにできることがあるなら協力はするけど、そのお店ってなんなの? 千世の親戚の人のお店とか?」
「ううん、全然知らない人だよ」
「なんだそりゃ。じゃあなんで千世がそんなに頑張らなきゃいけないわけ」
「それは、ですね」
言いよどむわたしに紗弥は怪訝そうに眉をひそめる。
いやわかる、わかるよ。怪しいのもおかしいのもわたしが一番わかっているんだ。なんの関係もない見知らぬおじさんのお店を立て直したいだなんて正気の沙汰じゃない。どうかしている。わたしも自分で何やってるんだろうって思ってるよ。
そもそもその理由も、他人様に全力でバカにされるような理由でしかないし。いや、でもそもそも紗弥にはもう、一度全力でバカにされていたんだった。
「神様の、お仕事で、ね」
ここはもう正直に行くべきだ、と本当のことを言ってみたら、案の定紗弥はきょとんとした顔をした。
「神様のお仕事って、千世が前に言ってた祟られたってやつの関係?」
「ま、まあ、そうなんだけど」
「えっと、千世、本当にやってるの? まじで神様のお手伝いしてるわけ!?」
そしてまたもや案の定、人目もはばからず大爆笑。
わたしは無性に泣きたくなるけれど、ここは我慢だ。むしろ無心。