「……まさかこの祟り、時限式とかじゃないよね!?」


そう言えば、何かが発動した気配も今のところ無いし……。

まさかとは思うけど、わたしのおケツを叩くために余計な機能を付けているのではあるまいな!


「さあ、どうだかな」


こっちを向いた常葉が、綺麗なお顔で意味深に微笑む。

当然のようにわたしは頭を抱えて、目の前の神様を呪う方法を考える。


だけど神様なんて呪えるはずもないし。そもそもわたしは根はいい子だから、本気で誰かを呪うなんてできないし。


「だから言っているだろう。夢とは何かに、千世が気づくだけでいいのだ」

「それはわかってるんだけど」


言葉で言うほど簡単なことじゃない。

他の人には楽にできても、わたしにとってそれは、神様を呪うことより難しいんだ。


常葉がふっと笑う。そうして、わたしから視線を変え前を向くと、右手を自分の胸の前に掲げた。

上を向いた手のひらに、ぼうっと淡い、光が灯る。


「……なにそれ。おばけ?」

「馬鹿を言うな。これは今日、お前が願いを叶えた子どもの夢だ」

「ユイちゃんの? クロを見つけてほしいってやつ?」

「違う。あの子どもはその願いの他に、もうひとつ夢を願っていった。それは千世が願いを叶えたからこそ、叶う夢だ」


常葉は立ち上がり、淡くまあるい光に、左手も添えた。


「ユイ、お前の願い、聞き届けた」


そして、大切そうに、それを星の昇る空へ向ける。


「 クロとずっと一緒にいられますように 」