男の子なのに、汗塗れなのに、泥だらけなのに。綺麗だなんて言葉はおかしいかもしれない。

でもそれが一番当てはまる。かっこいいとかじゃなく、素敵なんかでもなく。

野球をしている大和は、誰よりも綺麗だった。


「神崎くん。高卒でプロ目指すんだよね?」

「うん、そう言ってた。あいつ腹立つことに勉強もできるから、大学行くこともできそうだけど」

「でも大学行くのはもったいないもんねえ。絶対ドラフト指名くるし」

「わかんないけどね。ただ本人は、それを希望してる」


そして、そのために頑張っている。

並大抵の努力じゃないけど、弱音を吐いているところは見たことがなかった。大和にとっては、努力じゃないみたいだった。


『単に好きなことなんだ。頑張ってるわけじゃなく、俺は好きなことを続けてるだけなんだ』


いつか、そんなことを言っていた。

努力しているんですねと人に言われるたびに、なんだか首を傾げてしまうと首を傾げる幼馴染に、ふうんと、やる気のない相づちを打ちながら、わたしはそれを聞いていた。



「千世は今年も甲子園見に行くの?」

「大和のとこが行けたらね。でもまずは予選だよ。そこ突破しないと」

「神崎くんとこなら行けるでしょ。ああ、今年はあたしも行こうかなあ」


早速「お金貯めておかなきゃ」とか行ってる紗弥に、気が早いなあと呆れて笑った。

甲子園に行くためにはもうすぐ始まる予選を勝ち抜かなきゃいけないし、それはわたしたちが思ってる以上に大変で難しいことだ。

でも、その道のりが厳しいんだと考えるたび、それでもひとつひとつ着実に乗り越えて前へ進む大和は、本当に、すごいやつなんだなあと、思った。