呼吸も、まばたきも、何もかもを忘れて見ていた。
気づいたときには、最後の一粒が落ちた後。
空からの太陽の光が、わたしを照らしていた。
「…………」
衝撃過ぎて声も出ない。
あれだけ1日中曇っていて、おまけにどん引きするくらいのどしゃぶりで。
それが、たった、ほんの少しの間に。
すっかり晴れてしまったんだから。
「千世。これでいいか?」
その人が、振り向いたのが合図だった。
ハッと我に返ったけれど、体はまだ追いつかない。腰を抜かしてしまったわたしは、どしんとお社に尻餅をついた。
「大丈夫か」
「……あ、あなた、まさか、ほんとに」
「ん?」
首を傾げただけなのに、びくっと肩が震えた。
首筋をいやな汗が流れる。思考がまた、止まりかける。
なんなのこれ。ほんとどうすればいいの。
ていうか、もう、冗談だと、思いたいけど。
「あなた、ほんとに、神様なんですか」
信心深い訳じゃない。
言っておくけど我が家は無宗教なんだ。
おまけにわたしはどちらかと言えばリアリストで、幽霊だとか仏様だとか、悪魔だ天使だそういうものにはまったく興味も関心もなくて。
神様、とか。そういう偶像を、ちょっとした心の支えにするくらいなら構わないと思うんだけど。
それが本当にいるだとか、祈って救われるだとか、そう言う風に思う気持ちは、悪いけどカケラも持っちゃいない。
持っちゃいない、はずなんだけど。