その途中で、一度だけ振り返った。
黄色に染まる景色の中、たぶん、気のせいだと思うんだけど。一瞬だけ、誰かが、綺麗な顔で笑った気がして。
「…………」
気のせいだ。気のせいだってわかってる。でも、わたしは、そこに向かって手を振った。
ここにいるよ。頑張ってる。ちゃんと前見て歩いてるよ。だから、見ていてね。
「千世、前見ろ。転ぶぞ」
「あ、ごめんごめん」
隣を歩く大和と、ぎゅっと手をつないだ。
そうしてふたりで歩いて行く。
これからもずっと。どこまで続くかわからない道を。いつかは、自分だけの道を。
どこまでも。いつまでも。
「行こうか」
踏み出す足は、今日も、はじめの一歩。