歩きながら、三波屋の袋を開けた。

いくつか買ったおまんじゅうのひとつを取り出して、ぱくりと頬張った。

空を見上げる。学校を出る前よりも、どんより暗い梅雨の空。


「…………」


ぐしゃぐしゃのプリントを思った。

短い可愛くない爪の紗弥を考えた。

大和が、甲子園で投げた球を思い出した。


少しヒールの高いローファーの靴音だけが響いていた。

わたしはひとり、だらだらと、大した理由もなく毎日この場所を歩いている。



ふいに、鼻の頭が刺激があった。次にほっぺたにも。

なんだ、と思ったときに、目の前に一筋の線が走って。ぽつり、ぽつりと地面に粒が浮かんでくる。


「……うそでしょ」


雨だ。なんてこった。

そりゃあ今にも降り出しそうな空だったけど、朝からずっとこんな感じで降りそうで降らなかったから、家につくまでは大丈夫だって思ってた。

おまけにこんな日に限って、折りたたみ傘を忘れているし。


「最悪……!」


三波屋の袋をカバンにつっこんで、ヒモを肩にかけ直し道を走った。

どうせもう家に帰るだけなんだからちょっとくらい濡れたってかまわない。小降りのうちに急いで帰ろう。


そう思ったんだけど、今日は、なんだろ、神様に嫌われているのかな。

突然のどしゃぶりに。


「わあああ! うそ!?」


ザアアッと降り出した雨はあっという間に勢いを増し、地面を湿らせるだけじゃ飽きたらず水たまりにまでし始めた。

濡れたってかまわない、けど、さすがにこれは、ちょっとピンチ。


「あ、雨宿り……!」


できるところを探そうとして、商店街のほうを通っていかなかったことを後悔した。

裏路地のこっちは入れるお店屋さんがない。せめて、小さな屋根だけあればいいんだけど。