「昨日」に戻れば、皆生き返る。


それはわかってる。わかってるけど……私は怖くて。


心臓が破裂しそうな程の不安と、息苦しさに、胸を押さえてその場に屈んだ。


「ちょっと……明日香? 大丈夫!? いきなりどうしたのよ!」


心配した留美子が、私の背中を擦ってくれる。


それでも不安は消えなくて。


どうしてこんな事になったんだろうと、幾度となく考えた言葉で頭の中がいっぱいになった。


高広にもらったヒントで余裕が生まれた?


それでカラダが見つかるだなんて、私はなんて甘い事を考えていたんだろう。


私は……それを思い知らされた。


「明日香、ねぇ……明日香! 誰か来る!」


身をかがめて、事務所のカウンター越しに、廊下の様子を伺う留美子。







ペタ……。






ペタ……。






その音は、階段の方から聞こえてくる。


そして……廊下の角から、血塗れの手が現れたのだ。


その手を見て、慌てて頭を下げる留美子。