確かに翔太は、理恵と健司を自分の身代わりにしたけど。


それはあまりにもかわいそうなんじゃないかな。


私も「赤い人」に追いかけられたからわかる。


あの恐怖と不安は、まともに走る事さえさせてくれない……死そのものが追いかけてくるようなもの。


それなのに、翔太に逃げ続けさせると言うのは無理がある。


「でも、それじゃあ、翔太がふたりにした事と同じじゃない……それに、遥を殺させようとしたし、高広もあれだけ殴ったんだから、もういいんじゃないの? 許しても」


「明日香がそう言うなら俺は別に良いんだぜ? でも、許すか許さないかを決めるのは俺じゃねぇだろ? 健司と理恵が許すって言ったら、許してもいいんじゃねぇの?」


それはそうかもしれない。いくら私や高広が許したところで、ふたりが許さなければ意味がないのだから。


「後ひとつ、俺は気づいた事があってな」


まだ気づいてた事があったの?


早く言ってくれれば良いのに。






「明日香のベッド……良い匂いがするな。気持ち良くてすぐに眠れる」





「何言ってんのよ! バカ!!」


そんな話をしていた時だった。



ピピッ。



時計の電子音が鳴った。








いつの間にか目を閉じていた私は、催眠術が解けたかのように、ハッと目を開けると、いつものように目の前には学校の玄関。