「た、高広……私を……覚えててくれたんだ……」


私の胸の前に回された腕に、そっと手を添えて、高広がここにいるという事を確かめる。


奇跡が……起こってくれた。


頬を伝い落ちた涙が、高広の制服の袖を濡らす。


「当たり前だ、他のやつらはお前の事を忘れてるみたいだけどな。俺がお前を忘れるはずねぇだろ。ずっと探してたんだからな」


もしかして、今までずっと私を探してくれてたの?


私が目が覚める今日まで……。


「皆……私の記憶消されたんだって……私の存在が、もう……どこにもないんだって」


さっきまでは、悲しくて涙を流していたのに、今度はうれしくて涙が止まらない。


でも、どうして高広は私を覚えているの?


死んでしまったら、消去されているはずなのに。


「校内放送の『消去』か……俺はあの時はまだ、死んでなかったから。死ぬ寸前で、なんとか生きてた。腹をぶち抜かれて、死んだと思ったけどな」


そうだったんだ……。


私は、高広が死んだと思ったから耳をふさいだ。


それが、逆に私を孤独にしてしまったんだね。


「ありがとう……うれしい。高広が覚えていてくれて……」