そう呟き、肩を落とした私は、柵に歩み寄り、遠くの山に視線を移した。


高広と一緒にあの山を見た時は、紅く染まり始めたくらいだったのに……私がいない間に、真っ赤になっている。


きれいだな……最後に見るのが、ここの風景で良かった。


できればもう一度、高広と見たかったな。


後、私にできる事は……振り返るだけ。


そうすれば、美紀が迎えにきて、私は「カラダ探し」を頼む人になっちゃうんだろうな。


覚悟を決めた私が、ゆっくりと振り返ろうとしたその時だった。









「よぅ、こんな所にいたのかよ。お前、遥を殴ったんだってな?」










私の背後から聞こえたその声は……間違いなく高広の声だという事が、私にはわかった。


その声に、慌てて柵の方を向く私。


制服は汚れてるし、髪だってボサボサ、それに……高広に泣き顔なんて見せたくないから。


「何か言ったらどうなんだよ。遥が殴られたって聞いて、お前の事を探してたんだぜ?」


ゆっくりと、こちらに近づいてくる足音。


ダメ、これ以上近寄らないで。


こんな姿、高広に見せたくないよ。