どうせ殺されるならと。


「うー……、わかった。じゃあ、お姉ちゃんが振り返った時にまた、迎えにくるね」


そう答えた美紀は、私がまばたきをした後にはもう、その場から消えていて。


高広と話した場所……屋上の南端へと、私は向かった。


屋上の南側に出た私は、空腹と、急に走ったせいで足も頭もフラフラする。


まだ青い空、燃えるような紅葉を遠景に、私は柵の方に向かって歩いた。


『明日香、なぁにしてんだよ。早く来いよ』


柵にもたれている高広は、笑顔で私に手を伸ばしてくれている。


もう……意地悪だなあ。


少しくらい、こっちに来てくれてもいいのに。


「高広……ごめんね。返事が10日も遅れたね」


私もその手に触れようと、笑顔で手を高広に向けた。


『「カラダ探し」が終わってからで良いって言っただろ?』


「うん……ありがとう。高広、大好……」


そこまで言って、高広の手に触れた時。


高広の幻影が、私の目の前から消えてしまったのだ。


その手を下ろし、フウッと溜め息をついて、高広に触れた指を見つめる。


「また……言えなかったな」