高広に逢えた……。


逢いたくて逢いたくてたまらなかったのに、そう思っていた時よりも胸が苦しい。


理恵が叫んだ時、高広はやっぱり怒っていたみたいで……私を追いかけようとしていた。


本当に一目見ただけ、それでもうれしかったのに、今は辛くて……。


階段を駆け上がって、屋上のドアの前にたどりついた時には、今までにない程の涙が、頬を伝って流れ落ちていた。





「うぅ……た、高広ぉ……私を……助けてよ。ずっと一緒にいてよぉ……」





諦めたはずなのに、死ぬ事も考えていたのに、今は高広にギュッと抱きしめられたくて。


私はその場に崩れ落ちた。


高広が追いかけてきているような足音は聞こえない。


もう、本当にひとりなんだと思うと、身を切り裂くような苦しさを心臓に感じる。


どうして今頃気づいたんだろう。


こんなに高広が、好きで好きでたまらないのに、どうして想いを伝えなかったのだろう。


幻影でもなんでもいい。


もっと近くで高広を感じたい。


屋上の南端、あの場所に見た幻影をもう一度……。


そう思い、目の前のドアを開けた時だった。










私の目に、赤い服を来た少女が映ったのだ。




そういえば、もう放課後になっていたんだ。