これは……間違いなく、高広の声だ。


「ごめんね、高広。机を移動させてくれるだけでも助かったよ」


どうしよう、ドキドキしてきた。


私がいたはずの教室から、まずは理恵が、そして遥、最後に出て来たのが……高広だった。


いつもと変わらない、私が知っている姿なのに、もう近寄る事も、話す事もできない。


理恵と遥に挟まれている高広が、すぐそこにいるのに、物凄く遠く感じる。


「ねぇ、高広……私はここにいるよ? ひとりぼっちで寂しいよ……」


こちらに向かって歩いて来る高広に、助けを求めるように手を伸ばした。


止まらない涙を流しながら。


「あっ!! 高広、あの子だよ! 朝、遥にひどい事をした人!」


私を指差して、そう叫んだ理恵。


私はその言葉に、ハッと我に返り、伸ばした手で顔を隠すように階段を駆け上がった。



「何っ!? おい、お前ちょっと待て!!」



「あんな子どうでも良いじゃん、早く遊びにいこうよ」


高広と遥の声が後の方で聞こえたけど、私はただ涙を流しながら逃げるしかなかった。