そう言い、遥は手を振って去っていった。


高広まで遥に取られたら……もう、私には何も残っていない。


この想いでさえも、何の役にも立たない。


私は、力なく壁にもたれかかり、唯一できる事をするしかなかった。


ただ、涙を流すという事を。


それから私は、屋上で倒れるように横になり、涙を流し続けた。


涙が枯れるくらい泣いてるのに、いくらでも涙が出てくる。





高広が遥と……。


忘れるって、こんなものなのかな?


私の事を好きだって言ってくれたのに、忘れたら終わりなの?


誰に忘れられてもいいから、高広だけには忘れられたくなかったな……。


そんな奇跡、起こるはずないよね。


もしかしてと期待して、それに裏切られるのはもう嫌だ。


だったら、何にも期待せずに、私は大人しくその時が来るのを待とう。
餓死するのが先か、「赤い人」を見るのが先かはわからない。


でも……そうなる前に、やっぱり高広の姿を一目で良いから見たいな。