さっきあんなに泣いたのに、まだ涙は出るんだ……。


不思議だな。


こんなに悲しくて、寂しくて、死にたいくらい苦しいのに、それでもまだ、ひとつだけ私の中には想いがある。


忘れられてても良いから、遠くからでも良いから、一目だけでも高広の姿を見たいな。


それだけできたら、もう諦める事ができると思うから。


皆の事も、生きる事も……。


そんな事を考えていた時、また誰かが屋上に来たような気配がした。


シャッ、シャッ、と、靴がすれるような音が、こちらの方に近づいてくる。


意外と、ここは人が来るんだな……これじゃあずっと隠れてる事なんてできないよ。








「あら、こんな所にいたんだ?……なんてね。ホントは、留美子がここにいる事を教えてくれたんだけどね」










この声は……遥?


そう気づいた時には、私の足元で遥がかがんでこちらを見ていた。


「遥……あんたのせいで私は……私は……」


ゆっくりと上体を起こして、絞り出すように呟く。


本当は、遥のせいじゃない事くらいはわかってる。


「呪い」が原因だという事くらいは。


「明日香、あなたにお礼を言いたくてね。ありがと。おかげで『呪い』から解放されたわ」