留美子は、私が遥にした事を怒っているんだ。


でも、その言葉はまるで、「カラダ探し」をしていた時の留美子みたいで……。


遥や「赤い人」に向けられていた怒りが、私に向けられているような気がする。


「だからぁ、あんたはそんな事、今まで言わなかったじゃん。いつもは他人なんてどうでも良いみたいな事、言ってるのにさ」


「うるさいな! 嫌なら戻れば!? 私は絶対に……」


そう言いながら、私がいる方に歩いてきているような足音が聞こえた。


そして……壁の向こうから姿を現した留美子と、目が合ってしまったのだ。







「あれ? あんた……朝の変なやつ……」


座ったままの私は、留美子に見下ろされていた。


留美子が見ている……私が、誰かという事もわかっていない様子で。


朝に出会ったおかしな人としか、その目には映っていない。


「なになに、誰かいるの?……って、こいつじゃん! 殴ったやつって!」


私を指差して、留美子の後ろから姿を見せた友達が騒ぎ立てる。


きょとんとしていた留美子の表情が、徐々に怒りの色を見せ始めた。


「あんただったんだ。じゃあ、何? 朝に会った後、遥を殴ったっての?」