「あっ!」


そこまで考えて、私は思い出した。


11月9日を繰り返していた私達と、唯一話を進める事ができた八代先生なら、私を知らなくても話を聞いてくれる事を。


私が屋上にいる間に、少なくともチャイムが5回は鳴った。


ちゃんと数えていたわけじゃないからわからないけれど、三限目か四限目だと思う。


校舎に入った私は、人に気づかれないように、慎重に階段を下りていた。


相手が生徒なら、見つかっても気にも留めないだろうけど、先生は違うかもしれない。


授業中に、生徒が廊下を歩いる所を見れば注意をすると思うし、クラスをきかれると思う。


適当にごまかしても良いけど、私の存在がなくなった今、確認されると厄介な事になりそうで。


極力、誰にも見つからずに、旧校舎の職員室まで行きたかった。


「お願い、八代先生……授業に出ていないで!」


八代先生自身の力でも、どうにもならないような事を祈りつつ、一階までたどりつく事ができた。


後は保健室の前を通って、外に出れば良い。


「カラダ探し」をしていた時に、皆と一緒に何度も通ったルートだ。


そこから旧校舎に向かう道なら、誰が見ても農業科の生徒だと思い込むはず。