どこにも居場所がない私は、西棟の屋上、入り口とは反対側の壁際に座っていた。


ここは、理恵と一緒に隠れた事がある場所。


「赤い人」が来たと思って、ふたりで怖がってたら、健司が来て……。


どうして屋上から飛び降りたんだろうって、あの時は思ったけど、健司も必死に泰蔵と戦ってたんだ。


あれはきっと、最後の抵抗で自殺したんだと、今ならわかる。


それに、昨日の昼間、この屋上の南端で、高広と話をしたよね。


「カラダ探し」が終わったら返事をするって言ったのに、高広はもう私の事を覚えていないんだ……。


逢いたいな……。


逢って、私から「好き」って言いたいな。


近くにいるのに、逢えないよ。


私の事を好きじゃなくてもいいから、そばにいたいと思うのに。


高広の記憶の中にはもう、私はいないんだね。


「高広……逢いたいよ……」


悲しみで、胸がつぶれてしまいそうなほど苦しくて。


柵にもたれて楽しそうに話をしている、私と高広の幻影を見ながら、私は膝を抱えて泣いた。